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相続人の一人が、被相続人とともに家業に従事してきた場合、相続人の貢献によって相続財産が増加したという側面があることは否定できません。これが、家業に従事することが寄与分に影響を与える根拠であるといえます。
しかし、家業に従事すると言っても、事案によってその影響は大きく異なりますし、相続人の家業への従事が相続財産の増加にどのような影響を与えたのかという話になりますと、さらに判断が難しくなります。
それでは一体、家業に従事したという事実は、寄与分に関する裁判所の判断にどのような影響を与えるのでしょうか。大阪高決平成27年10月6日を題材として検討します。
寄与分を審判によって決定する際の考慮要素について、民法904条の2第2項は「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情」と規定しており、裁判所に広範な裁量を認めているように読めます。
もっとも、裁判所の判断は、どのような事件であれ、判決理由を読んだ際に皆が納得することができるような内容でなければなりません。
そのため、広範な裁量があるように見えても、ある程度当事者が納得できるような判断方法がとられることが多いと言えます。
例えば、家業を手伝っていたもののその給料が支払われていなかったという事案では、賃金センサスを元に給料を推計した上で、生活費相当額を差し引いた金額を寄与分と考えることもあります。
このような計算方法は、様々な仮定の上に成り立っておりますので、実際の金額とは本来異なるはずですが、他に合理的な計算方法がない中で説明に説得力を持たすためにこのような判断がなされることは、理解できるところです。
家事従事型では相続財産の〇〇%を寄与分とするという判断がなされることもよくあります。このような判断は、最終的に説得力を持たせることが困難な判断方法であり、他の説明ができない際の最終的な判断方法といえるでしょう。
本決定は、被相続人に妻と長男、次男がいる家庭で、長男が会社員として勤務しつつ家業であるみかん畑の仕事に従事したということを、寄与分においてどのように考慮すべきかについて判断がなされたものです。
これについて、第1審は遺産総額の30%を寄与分とし、本決定はみかん畑の評価額の30%と判断しました。
本決定がみかん畑の評価額に限定した理由としては、長男には「みかん畑を維持することにより遺産の減少を防いだ寄与がある」からであるとしています。
もっとも、本決定の原審である第1審は、
他方で、第1審は、「被相続人の家業である農業に従事することにより、被相続人の重要な財産である農地が荒廃することなく、収穫を産出し得る土地としての状態の維持が図られたもので、申立人は、被相続人の財産の維持に寄与したと認められ」ると判断しております。
おそらく第1審は、農地を相続財産の中で「重要な財産」と認定したために、遺産総額に対する割合で寄与分を決定したものと思われます。しかし、第1審の理由を前提にしても、みかん畑の評価額に対する割合で寄与分を定めることが素直なように感じ、やや雑な判断をしている感が否めません。
この事案は事例判断ですが、特に家事従事型の寄与分の認定は、仮定の上に成り立ってしまうので、立論の仕方が非常に重要となります。本件では、上で述べたような給与を仮定するような計算方法をとることができなかったので、このような割合的認定になっているのだと思われますが、これは理解できるところです。
そのうえで、どの点に寄与があったのかということが、本件の争点となっていたと考えられます。
家事従事型の寄与分といっても、事案によってその考え方は大きく異なりますので、本決定は立論の仕方について非常に参考となる事例であるといえるでしょう。
※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。
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