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父は高齢で手が震えるので、私が手を添えて自筆証書遺言を作成してもらってもよいですか?(最判昭和62年10月8日民集41巻7号27頁)

一定の場合に遺言が有効となると認めた判例もありますが、基本的には避けた方が良いでしょう。

本来ならば、気力も体力も十分あるうちに遺言を作成しておく方が良いでしょう。しかし現実には、自らの相続を意識し始めた時期に遺言を作成しようと考えることがほとんどです。したがって、その時期においては文章を書くことができるだけの力を持っていないということも想定されます。

文章を書くことができないという場合のなかには、文字を理解して書くことができる認知能力を有していないという場合もありますが、その他にも、例えば目が見えなくなったり手が震えるので文字を書くことができなくなったりするといった、認知能力に問題はないものの身体機能として文章を書くことができないという場合もあります。

前者の、認知能力が原因の場合は、そもそも遺言者自身が遺言の内容について理解することができない場合が多いです。その結果、裁判等になれば、遺言能力がなかったとして遺言が無効と判断される可能性が極めて高いです。

他方で、身体機能が原因の場合は、遺言者が遺言の内容自体は理解できていることが前提となりますので、遺言を作成することさえできれば、その遺言は有効になるのではないかと考えられます。

特に、目が見えなくなってしまった場合については、書くべき位置さえ分かれば文字を書くことは可能であるという場合、他人に今文字を書いている位置を示してもらえれば、自らの意思に基づいて遺言を作成することができます。

このように、自らの力だけでは文字を書くことができなくなってしまったとしても、他人の力を借りれば文字を書くことができるという場合、他人はどの程度の補助をしてよいのかという点が問題となります。

最判昭和62年10月8日民集41巻7号27頁

この判例の事案は、遺言者の手の震えがひどかったため、遺言者の妻が添え手をしたうえで、遺言者が自筆証書遺言を作成したという事案です。

この点につき最高裁判所は、「(1)遺言者が証書作成時に自書能力を有し、(2)他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、(3)添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡がないことが、筆跡のうえで判定できる場合」に民法968条1項の「自書」の要件を満たし、遺言は有効となると判断しております。

最高裁判所の判断は、やはり大枠としては、「遺言者の意思に基づいて遺言が作成されている」と認めてよいか否かという点に依拠しているものといえます。しかし問題は、すでに遺言者が亡くなった後に、上記のような要件を判断しなければならない点です。

この点、最高裁判所は、便箋4枚に概ね整った文字で本文が22行にわたって整然と書かれていた点に着目し、遺言者の筆記能力を考慮すれば、上記(2)を満たしていたとはいえないので、「自書」の要件を満たさないと判断しております。

この判例の事案の遺言書そのものを見ることはできませんので、このような事実認定が本当に正当なものなのかどうかは判断できません。ただ、立証構造から考えますと、基本的には、遺言者が普段自書していた手紙などの筆跡と遺言書の筆跡を比較するなどして、添え手をした他人の意思がどの程度介在しているのかを判断していくことになると思われます。

もっとも、このような判断は、誰がどう見ても筆跡が違っているような場合ならまだしも、そうでない場合には、主観的な判断に陥ってしまいがちです。したがって、添え手をして遺言を作成している時点では、遺言者がなくなった後に裁判等で遺言が無効と判断されてしまうのか否かを判断することは非常に難しいといえます。

まとめ

以上の通り、手を添えて遺言を作成したとしても、必ずしも遺言が無効となるわけではありません。

しかし、遺言を作成する本来の目的は、遺言者が死亡した後に、遺言通りに遺産相続が行われ、相続人間で争いが生じないようにするためであるといえます。

それにもかかわらず、後に争われる可能性がある遺言を作成するのでは、遺言本来の目的を達成することができません。

そのため、基本的には、様々な観点から有効性が争われやすい自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成することをお勧めいたします。

 

※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。

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