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安田総合法律事務所

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被害者参加制度

被害者参加制度とは、刑事手続に被害者が当事者のように参加する制度です。

刑事手続は、基本的に、裁判所、検察官、被告人(弁護人)の三者で行われる手続きです。

そのため、通常、被害者は、その供述調書が裁判所に提出されるか、証人として裁判所に出頭するという形でしか刑事手続に関わりません。

したがって、被害者が、被告人に対して強い処罰感情を持っていたとしても、被害者の証人尋問が不要だと考えられてしまうと、被害者が裁判所で処罰感情を述べることすら許されませんでした。

しかし、被害者参加制度を利用すると、被害者としての心情を法廷で裁判官に対して説明する等、通常の刑事手続では認められない様々な行為が認められることになります。

それでは、どのような行為を行うことができるのか詳しく見ていきましょう。

被害者参加制度の主な内容

証人尋問

被害者参加人は、裁判所から許可を受ければ、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)について、証人尋問を行うことができます。

例えば、刑事裁判では、被告人の刑を軽くするため、被告人の配偶者や両親などを情状証人として尋問することがあります。通常、これらの証人は、弁護人からの質問に対し、被告人の監督を行うことなどを証言し、検察官はこれに対して監督するという証言が信用できないことを立証するような尋問を行います。

このとき、検察官の行う反対尋問だけではなく、被害者参加人自身が考えた質問事項を尋ねられるということに意義があるといえます。

この場合、被害者参加人本人、その代理人である弁護士のどちらからでも質問をすることができます。

被告人に対する質問

被害者参加人は、裁判所から許可を受ければ、被告人質問を行うことができます。

被告人質問については、情状に関する事項のみならず、犯罪事実についても質問することができます。

この場合も、被害者参加人本人、その代理人である弁護士のどちらからでも質問をすることができます。

心情意見陳述

被害者は、心情意見陳述を行うことができます。

心情意見陳述とは、被害に関する心情その他被告事件に関する意見の陳述のことで、端的に言えば、その被害に遭ってどのような気持ちになったかなどの心情を裁判所で裁判官(及び裁判員)に対して説明することができます。

なお、心情意見陳述については、被害者参加の申出をしていない場合でも行うことができます。

被害者論告(最終意見陳述)

被害者参加人は、裁判所の許可を得て、事実及び法律の適用について意見を述べることができます。

上記心情意見陳述との違いが分かりにくいかもしれません。

心情意見陳述の場合、あくまでも心情に関する意見を述べるのに対し、被害者論告においては、端的に言えば、「これまで現れた証拠からすると、本件は~~という事件と考えるべきであるから、懲役○○年が相当だ。」といった意見を述べることになります。

もちろん、どこまで具体的に述べるかは事案によって異なりますが、心情意見陳述と被害者論告の意味合いは大きく異なることになります。

なお、最終意見陳述は量刑判断の資料とはならないのに対し、心情意見陳述は量刑判断の資料となり得ます。そのため、被害者の声を量刑に影響させることを望まれる被害者の方は、両方の意見陳述を行うことが多いです。

被害者参加できる場合

被害者参加は以下の事件でのみ認められております。

  1. 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 刑法第176条から第178条まで、第201条、第220条又は第224条から第227条までの罪
  3. 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第1号に掲げる罪を除く。)
  4. 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年法律第86号)第4条、第5条又は第6条第3項若しくは第4項の罪
  5. 第1号から第3号迄に掲げる罪の未遂罪

これらに当たる犯罪としては、例えば、殺人罪、傷害、強姦罪、自動車運転過失致死傷罪等があります。

このような犯罪においては、被害者の方にとって、被告人と顔を合わせるのは非常に抵抗があることと思います。また、傍聴席には被告人の関係者が来ている可能性があり、被告人の関係者らが見ている前で意見陳述等を行うことで精神的な負担を感じ、十分に陳述等ができなくなってしまう恐れもあります。

そのため、被害者参加申出をしても、被害者参加人代理人の弁護士のみが裁判所に出頭するということも可能です。被害者参加人の方が出頭して、検察官の後ろの席に座った上で、被告人や傍聴人から見えないようにする遮へい措置(ついたてを立てる等の措置)を採ってもらうこともできます。なお、被害者参加人代理人弁護士が検察官の後ろの席に座り、被害者参加人ご自身は傍聴席に座るということも可能です。

被害者参加のメリット・デメリット

被害者参加制度を利用すると、上記のような行為を行うことが可能となります。

しかし、これが厳罰化につながるかというと、必ずしもそうとは限りません。

もちろん、被害者参加をしたがために刑罰が重くなったように感じるケースがないわけではありません。しかし、刑罰はあくまで事件の内容や、その他の様々な要因にも影響されて決定されるため、「被害者参加をしたことが、いくらかでも刑罰を重くすることにつながったか」かを見極めることは非常に困難です。

このように、必ずしも厳罰化につながるとは言い切れない点を、デメリットと感じられる方も多いと思います。

しかし、被害者参加制度の本来的な目的は、当事務所の弁護士が実際に経験して感じたところとしては、「その事件を通して被害者がどのように感じたのか」、「犯人に対してどのように思うのか」といった点について、裁判所や裁判員の皆様にきちんと理解していただいた上で判決を書いてもらうことであるといえます。

被害者参加制度を利用しない場合、被害者の方の供述調書に「厳罰を望む」等の記載があるだけで、それ以上の感情を読み取ることは非常に困難でした。これに対して、被害者参加制度を利用すれば、様々な手続を通じて、被害者としての意見を直接裁判所に伝えることができます。

もちろんその結果として、刑罰が重いものとなることもあるでしょうし、被害者の方としてはそれこそが一番大事なことだと思われるのはもっともなことです。ただ、それだけではなく、被告人自身に被害者の方の気持ちをしっかりと認識させ、また、裁判所からも被害者の方の気持ちに理解を示した判決を出してもらうことができれば、被害者の方が事件に区切りをつける一助にもなりうるでしょう。

このように、被害者参加制度の意義については様々な意見のあるところとは認識しておりますが、利用される方によっては非常に大きなメリットがあると感じております。

日弁連の制度を利用すれば、費用を低廉に抑えることができる場合もございますので、ご利用を検討される方はご相談いただければと思います。

被害者参加以外の被害者が利用できる制度

損害賠償命令制度

通常、刑事手続と民事手続は全く別の手続きとなっておりますので、刑事裁判で有罪の判決が出たとしても、被害者は、それをもって即時に被告人から何らかの金銭の支払いを受けられるわけではありません。

被害者が被告人から何らかの金銭の支払いを受けられるのは、民事的な手続を取った場合、すなわち、民事裁判等の手続を取ったうえで支払いを受ける場合か、刑事弁護人を通じた示談交渉において賠償金を受け取る場合のどちらかであることが通常です。

しかしながら、民事手続と刑事手続とは全く別の手続きとなりますので、刑事裁判で仮に有罪との判決が出たとしても、民事裁判ではまた一から立証をしなければなりません。

損害賠償命令制度は、刑事裁判における証拠を損害賠償請求の判断に流用することで、被害者の負担を減らす制度となっております。

具体的な手続の流れとしては、刑事裁判で判決が出ると、その裁判所が刑事手続上の証拠を基に、被告人の賠償義務を原則4回以内で判断することになります。

その結果、損害賠償を命じる決定が下され、異議申立てがなされず確定すれば、確定判決と同様に強制執行を行うことができます。

このように、損害賠償命令制度は非常に被害者にとって有用な制度であると思われます。しかし、損害額について激しい争いとなることが予想される場合等、4回以内に判断することが困難となる場合は利用しにくい制度となっております。

損害賠償命令制度を利用されることをご検討されるのであれば、一度ご相談ください。

記録の閲覧謄写・その他各種通知制度

犯罪被害者の方には、公判記録の閲覧謄写が認められております。

そのため、刑事裁判終了後に、民事訴訟を提起する際には、この閲覧謄写制度を利用することもできます。

不起訴となった事案については原則として記録の閲覧謄写は認められておりませんが、実況見分調書については、弁護士会を通じた照会等で開示を受けることができます。

また、この他にも、被害者は、事件の処分結果、犯人の身柄の状況等に関する事項について通知を受けることができます。

この他、少年事件手続などでも被害者を支援するための制度がございますので、お気軽にご相談ください。

犯罪被害者給付制度

犯罪被害に遭われた方のうち制度上の要件に該当する方は、申請を行うことにより犯罪被害者給付金の支給を受けることができます。

具体的には、

  1. 亡くなられた犯罪被害者の第一順位遺族
  2. 犯罪行為により重傷病を負った犯罪被害者ご本人
  3. 犯罪行為により障害が残った犯罪被害者ご本人

は犯罪被害者給付金の支給対象者とされています。

もっとも、ここでいう犯罪行為は、故意による犯罪行為に限定されている他、犯罪被害者と加害者との間に親族関係があるとき等には支給されない場合もありますので、詳しくはご相談ください。

 

※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。

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