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試用期間中に問題を起こした従業員は本採用しなくても問題ありませんか?

本採用拒否は、普通解雇よりは緩やかに認められますが、適法性については個別具体的に判断されますので、注意が必要です。

試用期間は、従業員の能力や適性等を確認するために設けるものですから、期待していた水準に達していなければ、当然に解雇してもよいのではないかと考えられるかもしれません。

しかし、試用期間とはいえ、一度採用されてしまうと、その従業員は少なくともその就業時間は他の会社で働くことはできません。このような状況下で、会社が完全に自由に解雇することができるというのでは、従業員は非常に不安定な地位に身を置かざるを得ない結果となってしまいます。

そのため、試用期間中の本採用拒否でも、基本的には、解雇権濫用法理が適用されることになります。

とはいえ、従業員の能力や適性を確認するための期間として試用期間を設けているという会社側の事情も理解できるところではありますので、解雇権濫用法理が適用されるとしても、その適用の度合いは、本採用後の普通解雇の場合とは異なります。

簡単に申し上げますと、試用期間中の本採用拒否が可能となる要件としては、新卒採用者の場合、その会社の正社員として最低限求められる能力すらないことが必要であり、中途採用者で特に専門性に対する期待が高い場合は、その期待された専門性を有していないことが必要となります。

もっとも、これらの表現には幅があるところですので、以下、具体例を用いてご説明いたします。

日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日労判1045巻5頁)

この事件は、技術職員として採用した新卒者を、試用期間6か月のうち4か月弱で本採用拒否したという事案です。

裁判所は、この本採用拒否を有効としました。

上に述べたとおり、一般論としては、新卒採用者の解雇は、たとえ試用期間中の本採用拒否の場合といえども要件としては厳しいといえます。しかし、本件は、非常に危険性の高い業務をに従事していたという特殊性もあり、試用期間満了前の時点において、本採用拒否が認められたものです。

裁判所は、やはりこの職員の担当業務の危険性が高いことを指摘したうえで、「チームで作業を行う場合や危険な機器類を扱う場合に最低限守るべきことに違反した事象を3件起こしている」(原審)等の事実を認定して、本採用拒否を有効と判断しております。

ニュース証券事件(東京地判平成21年1月30日労判980巻18頁)

この事件は、営業職として中途採用された従業員が、試用期間6か月のうち3か月間の売上実績をもって本採用拒否された事件で、裁判所は、この本採用拒否を無効と判断しました。

中途採用者につきましては、一般論としましては、本採用拒否が比較的適法と認められやすいといえます。しかし、本件は、従業員が様々な制約条件のもとで努力を行っていることが認められるとともに、試用期間を満了していないという点から、無効と判断されております。

実際の事案では主張が錯綜しておりますが、本来的な判断としては、元々採用時に試用期間を設けた趣旨は、6か月間の勤務状況や業績を確認した上、これが著しく悪い場合には報酬額を減額し、従業員としての適格性すら有しない場合には本採用を拒否するというものであることを前提として、この従業員の業績は高いとはいえないものの、6か月の試用期間のうち3か月間の業績に過ぎないため、従業員としての適格性を有しないとまでは即断できないという観点から、無効と判断されたものと思われます。

まとめ

試用期間に関する判例は多数ありますが、少なくともいえるのは、試用期間であるからといって、裁判所は無条件で本採用拒否を有効と考えるのではなく、個別具体的な事案を考慮するということです。

そして、確かに新卒採用者と中途採用者で判断過程は異なりますが、いずれの場合についてもも、有効と判断される可能性も、無効と判断される可能性も存在します。

使用者の方々としましては、仮に後日争いになるとしても、今ここで解雇したい、と考えられることもあるかもしれません。もし、無効とされるような解雇(本採用拒否)をしてしまい、裁判所も無効と判断したとしても、別の理論によって、結果としてその従業員を会社に戻さないということが実現する可能性はあります(現に、上記ニュース証券事件は、本採用拒否は無効であるとされたものの、結論としてはその従業員は会社に戻らない旨の判断が下されました。)。

しかし、解雇をするのであれば適法に行わなければ、他の従業員の士気にも影響しますし、より良い人材を確保するという観点からは、適法な労務管理を行う企業であることを内外に示すことの重要性が、今後ますます高まることと考えられます。

試用期間満了による本採用拒否を適法に行うための第一歩は、従業員の能力の欠如に関する証拠を収集することであり、各種の指示を行った場合はそれを書面に残しておくことも重要な対策となります。

そのうえで、「この従業員を適法に解雇することができるか」、ということを判断しなければなりませんが、対象となっている従業員に現に悩まされている使用者の方にとっては、感情が入ってしまい冷静な判断が困難となってしまうことも少なくありません。

労務管理は長期的な戦略が必要となりますので、日ごろから顧問弁護士をつけておいて、その顧問弁護士にご相談されることが最適です。もっとも、解雇を検討し始めた際には、少なくともその段階において弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。

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