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傷病休職をしていた従業員から、この度、復職したいとの申し出がありました。復職させて良いかどうかはどのように判断したらよいですか?

復職の可否は、法律上の概念である「治癒」の有無によって定まるものであり、必ずしも従業員の主治医の意見に従う必要はありません。

傷病休職とは、従業員の業務外の傷病による休職のことです。

かつては、例えば怪我をして入院するなど、明らかに休職が必要な状態で傷病休職に入るケースが多かったので、傷病休職に入ることが相当か否かについてはあまり問題となることはありませんでしたが、近年においては、精神疾患などの外からは見えにくい傷病による傷病休職も少なくありませんので、傷病休職に入る際の判断も難しいといえます。

また、傷病休職から復職することが相当か否かの判断につきましても、特に精神疾患による傷病休職において争いが先鋭化しやすいといえます。

その理由は様々あると思いますが、やはり精神疾患の治癒の有無を判断することが難しいという点にあると考えられます。

そして、精神疾患の例で言いますと、よく生じる争いの流れとしては、従業員の主治医が治癒した旨の診断書を作成し、従業員がそれを持参したところ、これを受けて会社が産業医に診断を依頼し、産業医は治癒していないという診断を下したため、会社は従業員を復職させず、自然退職とした、というものが多いといえます。

それでは、実際にこのような状況に直面した場合は、どのような点に注意して判断すべきなのでしょうか?

傷病休職から復職までの法律解釈

傷病休職は、上記のとおり従業員の業務外の傷病による休職のことですので、例えば、従業員が休日に家族で旅行中に交通事故に遭って入院した場合、その従業員は傷病休職に入ることになります。

傷病休職は、法律に規定されている制度ではありません。通常は、就業規則に傷病休職に関する規定がありますので、これに基づいて運用されます。

例えば、厚生労働省のモデル就業規則では、

「第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

①業務外の傷病による欠勤がか月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  年以内」

という規定が置かれています。

復職についても同様に、モデル就業規則においては、

「第9条 … 

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。」

と規定されております。

これらは、傷病が「治癒」したときに復職させるということを意味する条項であるといえます。

モデル就業規則では、上記のとおり、「元の職務」に復帰させることを原則としていますが、「元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。」と記載されております。この点は、詳しくは後述いたしますが、「治癒」の判断に影響を与えることになります。

そして、最終的に「治癒」しなかった場合について、モデル就業規則では、

「第9条 … 

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。」

と規定しております。

簡単に説明しますと、休職期間中に「治癒」しなければ自然退職になるということを意味します。

このように、傷病休職、復職、自然退職を適切に処理するためには、「治癒」について正確に判断する必要があることになります。

治癒の判断

「治癒」についての判例は様々であり、この点が理解を困難にしておりますが、基本的な考え方としては、労働契約において職種の限定があるか否かで分けて考えるべきでしょう。

まず、労働契約において職種を限定して雇用した場合、その職種において求められている業務を遂行することができるのであれば、復職を認めなければならないといえます。

逆に、「会社に異なる職種が存在しており、そちらの職種は元の職種よりも軽易な業務内容である」という場合であっても、職種を限定して雇用した場合には、原則として、その軽易な業務につくことができるかどうかを検討する必要はなく(アロマカラー事件(東京地決昭和54年3月27日労経速1010号25頁)、例外的に、当初は軽易な業務につかせればほどなく通常業務に戻ることも可能と認められるような事情が存在する場合には、そのような配慮を行うことが会社に義務付けられることになる場合があるといえます(エール・フランス事件(東京地判昭和59年1月27日判時1106号147頁)など)。

次に、労働契約上職種の限定がない場合に、従業員が復職後の職務を限定することなく復職の意思を示している場合には、従前の職務に限定せず、会社は配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討する義務があることになります(東海旅客鉄道事件(大阪地判平成11年10月4日労判771号25頁))。

このような判例を総合しますと、裁判所は、就業規則等により配置されることが従業員の権利として認められている業務につくことができる程度に回復したか否かによって、「治癒」の有無を判断しているのではないか、と当事務所としては考えております。

以上が法律論となりますが、現実には、個別具体的なケースにおいて「治癒」したといえるのはどのような状態なのかということが、特に精神疾患等のケースにおいて問題となるところです。

上記のとおり、「治癒」というのは、あくまでも就業規則に記載されている「治癒」の文言に当たるかどうかという就業規則の解釈の問題です。

したがって、その性質上、「治癒」したか否かについては、医師が最終的な判断を下すべきものではありません。すなわち、「従業員の主治医又は会社の産業医が「治癒」した(していない)と判断したから、即座に法律上も「治癒」した(していない)と判断される」という構造にはないということになります。

しかしそうはいっても、弁護士や裁判官は医療の専門家ではありませんので、医師の判断を無視することはできません。

現実には、従業員の主張と会社の主張をそれぞれ確認したうえで、主治医や産業医が行った判断が適正に行われたのかということを判断していくことになります。

そのため、会社としては、従業員が主治医の診断書を持参して復職を求めてきた場合、まずは産業医の診断も受けるよう勧めるべきといえます。そして、産業医の判断が主治医の判断と異なる場合には、法律の専門家である弁護士に相談して、従業員に対する最終的な処分を決することになるでしょう。

 

※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。

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