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仮差押え

裁判をするには時間がかかります。債権者が勝訴判決を得て強制執行に着手できるようになるまでの間に、債務者が財産を手放したり隠したりしてしまう恐れがあります。

仮差押えは、このような事態を防ぐため、裁判所が、あくまで暫定的な処分として債務者の財産を動かさないよう命ずる決定をしてくれる手続です。

なお、仮差押えができるのは、債権者が債務者に対して有している金銭債権(売掛金債権、賃料債権、貸金債権、損害賠償請求権等)の保全を目的とする場合に限られます。

仮差押えの種類

動産仮差押え

動産仮差押えの特徴

債務者が有する「動産」を仮差押えする手続きです。

動産とは不動産以外の物のことであり、動産仮差押えの対象となる動産は、貴金属、裏書の禁止されない有価証券、現金等多岐にわたります。

ただし、債務者の生活に欠くことのできない家財等、一定金額の金銭、債務者の業務に欠くことのできない物(ただし商品への動産仮差押えは可能)等の一定の動産については、差押禁止動産として法律上仮差押えが禁止されてています。

また、そもそも仮差押えをしようとする動産の価値が仮差押えの手続費用にすら達しないような差押えを行うことも禁止されています。

債務者が法人や事業主の場合は、商品、原材料、機械等の動産を差し押さえることも考えられます。しかし、債務者が個人の場合は、高価品やまとまった現金を所有している可能性は少ないため、上記の禁止事項に抵触してしまい動産差押えができない場合が多いです。

また、債権者にとっては、そもそも債務者が仮差押えの対象となるような動産を所有しているか否かを把握することも困難といえます。

したがって、実際に動産仮差押えが行われるケースはあまり多いとはいえません。

動産仮差押えの効力

動産仮差押命令が下された場合、以下のような効力が生じます。

1.債務者に対する効力

(1)処分の制限

債務者は、仮差押えの対象となる動産について、譲渡、担保権設定等の一切の処分行為を行うことが制限されます。ただし、この制限は絶対的なものではなく、あくまで仮差押え手続との関係でなされるものです。

(2)使用・収益の制限

動産仮差押えの執行は目的物を執行官が占有する方法で行われるのが原則なので、結果として債務者は仮差押えの対象となった動産を使用・収益できなくなります。ただし、執行官において仮差押えの目的物を債務者に保管させることもあります。

2.第三者に対する効力

債務者が、上記1.(1)の処分の制限があるにもかかわらず第三者に対して動産を譲渡する等してしまったとしても、(第三者が動産を即時取得する場合を除いて)債権者はこれを無視して、債務者への勝訴判決等を得たあかつきには動産の競売等を行うことができます。

また、動産が第三者の手に渡ったことをすぐに察知できれば、裁判所が第三者に対して動産を執行官に引渡すよう命じる引渡命令の制度を利用することも考えられます。

債権仮差押え

債権仮差押えの特徴

債務者が有する「債権」(預金、売掛金、債務者の第三者に対する貸金等)を仮差押えする手続きです。

現代ではほとんどの人が預金をしているので、動産よりも存在が確実であると言えます。また、動産を競売にかけてもかなり低い値段でしか売れないことがほとんどですが、預金であればほぼ額面で回収できるというメリットもあります。

しかし、預金を仮差押えするには、「債務者がどこの金融機関のどこの支店に口座を有しているか」というところまで、債権者の側で明らかにしたうえで仮差押申立をしなければなりません。また、債務者の口座が分かったとしても、その口座にいくら残高があるかを債権者側が把握するのは困難であるため、一番残高が多そうなところに目星をつけて仮差押えをやってみる、という方法を採らざるを得ないことも多いです。

なお、対象となる債権が債務者の給与である場合、法律上、債務者の生計維持を考慮して原則として毎月の給与の4分の3の額(債権者の請求債権が婚姻費用、養育費等の場合は2分の1の額)について仮差押えが禁止されています。

債権仮差押命令の効力

債権仮差押命令が下された場合、以下のような効力が生じます。

1.債務者に対する効力

債務者は、仮差押えの対象となる債権について、譲渡、担保権設定等の一切の処分行為を行うことが制限されます。ただし、この制限は絶対的なものではなく、あくまで仮差押手続との関係でなされるものです。

なお、債権仮差押えが執行された後でも、債務者が、仮差押えの対象となった債権の債務者(これを「第三債務者」といいます。)に対して支払を求める訴訟を提起することは妨げられません。

2.第三者に対する効力

仮差押えされた債権の譲渡を受けた第三者は、その債権譲渡を仮差押えをした債権者に対抗できません。

第三債務者が債務者に弁済することは禁止されます。第三債務者が仮差押命令を無視して債務者に弁済したとしても、債権者は第三債務者に対しさらに支払うよう求めることができます(もっとも、第三債務者が供託を行った場合は、それ以上第三債務者に支払いを求めることはできません。)。

不動産仮差押え

不動産仮差押えの特徴

債務者が有する「不動産」(土地、建物)を仮差押えする手続きです。

債務者の社屋、工場、自宅等とその敷地の不動産全部事項証明書(登記簿)を取得し、①その不動産が債務者本人の所有物かという点と、②抵当権等がついているかという点を調べて、その不動産から債権回収できる見込みがあるようでしたら不動産仮差押えを検討します。

ただ、不動産は価額が高いことが多いため、担保の額も高額になってしまいがちです。

不動産仮差押命令の効力

不動産仮差押命令が下された場合、以下のような効力が生じます。

1.債務者に対する効力

債務者は、仮差押えの対象となる不動産について、譲渡、担保権設定等の一切の処分行為を行うことが制限されます。

この制限は絶対的なものではなく、あくまで仮差押え手続との関係でなされるものです。しかし、不動産仮差押えがなされると、不動産に仮差押えの登記が設定されます。仮差押えの登記がある不動産を売却したり抵当に入れて借金をしたりすることは基本的には困難なので、結果として保全の目的がほぼ確実に達成されることになります。

なお、ほとんどのケースにおいて、不動産仮差押命令が下された後も、債務者が引き続き不動産を使用・収益することは妨げられません。

2.第三者に対する効力

不動産の仮差押命令が下された後も、債務者が、不動産を第三者に譲渡したり担保権を設定したりすることは不可能ではなく、その旨の登記も可能です。

しかし、債権者は、不動産に第三者の所有権移転登記や担保設定登記があったとしても、これを無視して不動産競売等を行う事が可能です。

そのため、第三者(特に金融機関等)は、仮差押えの登記のある不動産の購入や抵当権設定等を敬遠することがほとんどです。

仮差押えの担保

仮差押えは、判決等が出ていない段階で、暫定的に債務者の財産を動かせなくする手続です。

したがって、債務者の立場からすると、仮差押命令によって多大な不便を被ったあげくに、後になって債権者の債務者に対する債権が存在しないことが判明するといった事態が起こり得ることになります。

そこで、債務者に生じる可能性のある損害を担保するため、仮差押えを申立てた債権者は裁判所に対して担保を納めなければならないと定められています。

担保額は、仮差押命令の内容、債権者の債権額と債権の性質、仮差押えの対象物の価額と種類、債務者の資力や信用の状態等、仮差押命令が債務者に及ぼす不利益の程度等に加え、仮差押命令申立の内容等も考慮して、ケースバイケースに判断されます。

しかしおおよその目安としては、不動産仮差押えであれば仮差押えの対象となる不動産の価額の10~25%、債権仮差押えであれば仮差押えの対象となる債権額の10~30%ほどである場合が多いようです。

仮差押手続の概要

手続の流れ〜申立・仮差押決定・本執行まで〜

仮差押申立を弁護士にご依頼いただいた場合の手続の流れをご説明いたします。

仮差押えの手続の選択

弁護士は、お客様(ここでは債権者の方)から伺った事実関係を基に、債権額、債務者の属性・資産状況・交渉経緯等、様々な事情を総合的に考慮して、以下の点につき検討します。

  • そもそも仮差押手続によって債権回収が図れるのか(コストに見合う結果が得られる見込みがあるか)。
  • 仮差押手続を行うとすれば、債務者のどの財産を仮差押対象財産とすべきか。
  • 担保の見込額を算定し、債権者がその担保額をいつ頃用意できるかをを検討。

申立の準備

仮差押えにおいて最も重要なのは、1日でも早く裁判所に仮差押命令を下してもらうことです。そのためには、もちろん1日でも早く「仮差押命令申立書」を裁判所に提出しなければならないのですが、提出の早さだけではなく「仮差押申立書」の内容にも気を配らなければなりません。

仮差押命令を下してもらうには、裁判所に対して、①債権者の債権が実在していること(被保全権利の存在)、②今仮差押えをしなければ、債務者が仮差押対象財産を隠したり遣ってしまう可能性が高く、債権回収が非常に難しくなること(保全の必要性)を説得的に主張することが必要です。

当事務所の弁護士は、どのような証拠があれば裁判所に対して有効な主張が出来るかを検討し、お客様と協力して迅速かつ的確に証拠資料収集及び申立必要書類の作成を行います。

申立から仮差押命令が下されるまで

仮差押えの申立を行うと、裁判所から申立の内容について何点か質問があることが通常です。

弁護士がこの質問に回答し、裁判所が「被保全権利の存在と保全の必要性が明らかにされたので、仮差押命令を下すことが可能である。」と判断した場合は、裁判所から、「担保は○○円ですので、納付してください。」と連絡があります。

担保金の納付が完了すれば、その日に裁判所は仮差押命令を下し、債務者および第三債務者等に対して、「仮差押決定書」を送達してくれます。

債務者側からの不服申立、あるいは和解による解決

仮差押命令に不服のある債務者は、保全異議申立等を行って仮差押命令を行うことが考えられます。保全異議申立に対して裁判所から決定がなされた場合、さらに保全抗告を行ってこれを争うことも可能です。

逆に、仮差押命令がなされたことによって債務者が譲歩し、「債務者が一定額を債権者に支払うのと引き換えに仮差押えを取下げる」という内容の和解が成立することもあります。

債務者を被告とする訴訟の提起

仮差押えを行った後は、速やかに債務者を被告とする訴訟を提起する必要があります。

もし、仮差押えをした後に訴訟提起をしないままでいると、債務者から起訴命令申立がなされることがあります。裁判所は、債権者に対し、一定の期限内に訴訟を提起し、そのことを証明する書類を提出するよう命じる起訴命令を下します。債権者がこれに従わなかった場合、債務者の申立によって、仮差押命令は取り消されてしまいます。

本執行への移行

訴訟で債務者に対する勝訴判決を得たら、仮差押えの対象となっている財産について改めて本執行(強制執行)の申立を行い、強制執行の手続によって財産を換価し、債権を回収します。

仮差押手続を有効に活用するために

迅速に行う

債務の支払いを行わない債務者は、経済的に困窮している可能性が非常に高いため、財産を隠してしまう可能性が高いです。

また、困窮している債務者は他の複数の債権者に対しても債務を抱え、これらを滞納している可能性が高いです。そうすると、債務者の他の債権者が、債務者に強く迫って債務者の唯一の財産を自分のものにしてしまうことがあります。このような「ぬけがけ的」な債権回収に対する民法上の対抗手段はあるにはあるのですが、要件が非常に厳しいです。そのため、ひとたびこのようなことが起こってしまうと、その後の債権回収は非常に困難になります。

したがって、債務者の財産隠しや他の債権者の「ぬけがけ的」債権回収が行われてしまう前に、仮差押えを迅速に行う必要があります。

秘密裏に行う

仮差押申立を準備していることが知られてしまうと、債務者が先回りして財産を隠したり、他の債権者が仮差押えの対象財産を自分のものにしたりするおそれがあります。

したがって、仮差押申立は秘密裏に行い、仮差押命令が下されるまで情報が漏れないように気を付ける必要があります。

 

※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。

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