富山県弁護士会所属
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世の中で売買される物には、実に様々なロゴマークやネーミング(商標)がつけられています。
私達が買い物をするときは、商品に付された商標を目印に、他の同種の商品から自分の目当ての物を選り分けて購入することができます。また、商標が著名であればあるほど、商標から受けるイメージは、その商標を使用している企業のイメージそのものとなっているといえます。
そんな商標を、誰しもが勝手気ままに模倣できたとすればどうなってしまうでしょう?
同じ商標が付いていても同じ品質の商品であるかどうかわからないことになりますから、誰も商標には見向きもしないことになります。そうなれば、こだわりの商品を作り、自社の商標を付して売上を上げていた優良企業もたちまち倒産してしまうでしょう。
商標法は、このような事態を防ぐため、商標登録制度を設け、登録された商標と商標権を保護することを定めた法律です。
商標とは、事業者が、自らが取り扱う商品又は役務(サービス)の同一性を表示し、あるいは他者の取り扱う商品又は役務と区別するために使用するマーク(識別標識)です。
さらに詳しくみていと、商標については、以下のような様々なものがあります。
商標のうち典型的といえるのは、文字、図形、記号及びこれらの組み合わせです。
しかし、近年では、以下のような新しいタイプの商標についても商標登録が行えるようになりました。
もっとも、音と動きを組み合わせた動画や、味やにおいを商標登録することはできません。
また、立体的な形状(店頭にいる宣伝用の人形、飲料のビンの形等)についても商標登録が可能ですが、商品及びその包装自体の形状の商標登録は、他者が同種の商品を生産できなくなることにつながりかねず、競争を妨げる恐れが大きいため、使用されてきた結果需要者から見て他と識別可能といえるようになったもののみ登録が可能です。
一般社団法人、事業協同組合等は、その構成員に使用させる商標について、団体商標の商標登録を受けることができます(会社は不可)。
団体商標が付された商品が、その団体に所属する構成員の商品・役務であって、一定水準の品質を備えていることを表すための商標といえます。
事業組合、商工会、商工会議所等は、需要者の間に広く認識されている等の一定の要件を満たす場合、その構成員に使用させる商標として、地域の名称及び商品・役務の一般的名称から成る地域団体商標の商標登録を受けることができます。
地域の特産品のブランド化等を想定した商標です。
商標登録は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して行わなければなりません。
この商品・役務は、商標法施行令別表に第一類~四十五類の区分に分けて記載されており、商品・役務の指定は、区分に従ってしなければなりません。
例えば、自社で製造している時計の商標について商標登録を行いたい場合は、「時計」は第十四類の区分に属する商品なので、「第十四類 時計」と願書に記載して出願しなければなりません。
商標権の効力は、登録出願時に指定した商品・役務若しくはこれに類似する商品・役務についてのみ及びます。
ですので、例えば、「ヤスダトケイ」という商標を、商品を「第十四類 時計」と指定して出願して商標登録を受けた場合に、他社が「ヤスダトケイ」という表示を大根に付けて販売していたとしても、これを商標権侵害として争うことはできません(後述の防護標章登録を受けられる場合を除く)。
商標登録を受けようとするときは、所定の事項を記載した願書に必要な書面を添付して、特許庁に出願をしなければなりません。
同一又は類似の商品・役務について、同一又は類似の商標の出願が複数あった場合は、最も先に出願した者のみがその商標について商標登録を受けることができます(先願主義)。
先願主義のもとでは、仮に、2番目の者が最も先に出願した者よりも古い時期からその商標を使用していたとしても、最も先に出願した者が商標登録を受けることとなります。
商標登録出願がなされると、特許庁審査官による審査が行われます。審査の結果、商標登録出願が以下に述べるようなものであると判断される場合、商標登録をすることはできません。
需要者から見て、誰の業務に係る商品・役務かが認識できない商標は、商標登録することができません。
具体的には、
については商標登録することはできないと商標法で定められています。
もっとも、上記3.~6.に該当する商標であっても、その商標が特定の者に使用された結果、誰の業務に係る商品・役務かが認識できるようになった商標については、例外的に商標登録をすることが可能となります。
以下のような商標について商標登録を認めることは公益上の要請に反するため、認められません。
以下のように、「他との識別」という商標の意義に反するような商標については、登録が認められません。
商標登録出願に対する審査の結果、登録査定がなされたときは、出願者が登録料を納付すれば、商標権の設定登録がなされます。そして、設定登録によって、「商標権」が発生します。
では、商標権にはどのような効力があるのでしょうか。
商標権者は、指定商品又は役務について、登録商標の使用をする権利を専有します。すなわち、商標権者だけが、指定商品又は役務について登録商標を使用することができ、それ以外の者の使用は排除できます。
ここでいう「使用」とは、商品又は商品の包装に商標を付する行為、商品又は商品の包装に商標を付したものを譲渡、輸出入等する行為、役務の提供の用に供するものの商標を付する行為、商品又は役務の広告に商標を付して展示する行為等、多岐にわたります。
上に述べたとおり、商標権者は、指定商品又は役務について自身だけが登録商標を使用することができ、第三者の使用は排除できます。
これに加えて、第三者が
についても排除することができます。
したがって、例えば、第三者が、登録商標の指定商品又は役務と同一でもなく類似してもいない商品又役務に、自己の登録商標と同一の商標を使用することについては、商標権の効力としては排除することはできません(このような場合に対応する制度として、以下に述べる防護商標登録制度があります。)。
商標権者は、その商標権について、他人に使用権を許諾することができます。
使用権には、通常使用権と専用使用権の2つがあります。
通常使用権が、非独占的に商標を使用する権利であるのに対して、専用使用権は、設定行為で定めた範囲内において独占的に商標を使用できる権利です。専用使用権を設定した場合、商標権者自身も設定行為で定めた範囲においては商標を使用できないこととなります(例えば、商標権者が、他人に「北海道における専用使用権」を設定した場合、商標権者は北海道では登録商標を使用できません。)。
商標権の効力を一律に及ぼすことが、他人の経済活動を著しく妨げるような場合には、商標権の効力は制限されます。
例えば、
は、この他者の行為を排除することはできません。
商標権者又は専用使用権者は、商標権を侵害する者又は侵害する恐れのある者に対して、現在の侵害の停止、将来の侵害行為の予防を請求することができます。
また、これらの請求をするに際し、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます。ほとんどのケースで、侵害の予防に必要な行為とは具体的に何かということにつき商標権者等と侵害者等との間で争いとなると思われるため、最終的には裁判所の判断ということになります。
なお、すでに侵害の危険が現実化しており、裁判所の判決を待っていたのでは商標権者等に著しい損害が生じる場合には、仮処分を申し立てます。
また、商標権侵害について不法行為に基づく損害賠償請求を行うことも可能であり、商標法には損害額の推定規定も置かれています。
さらに、特許権侵害の場合と同様に、過失の推定、具体的態様の明示義務、権利行使の制限、書類の提出・鑑定等、相当な損害額の認定、秘密保持命令等、信用回復措置等の規定が適用されます。
商標権侵害は、商標権者の商標が持つブランドイメージに傷をつけるという側面がありますから、信用回復措置を求めることには意義があるといえます。
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です。
もっとも、その商標を付した商品・役務が広く普及している場合、商標権者にとっては長く商標を使用し続け、ブランドイメージを守り育てていく必要性が大きいといえます。
そこで、商標法は、商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することができると規定しています。
更新期間は最大10年であり、更新は何度でも行うことができるので、必要であれば永遠に商標権を持ち続けることが可能です。更新登録申請料も、10年分で38,800円×区分数(一括支払いの場合、平成28年11月現在)と比較的安価です。
もっとも、更新登録をするのを忘れてしまうと、最終的に商標権は消滅してしまいますので、必ず忘れずに更新登録を行うことが必要です。
上の「商標権の効力」のところで述べたとおり、第三者が、登録商標の指定商品又は役務と同一でもなく類してもいない商品又役務に、自己の登録商標と同一の商標を使用することについては、商標権の効力としては排除することはできません。
しかし、著名な商標であれば、類似しない商品・役務に使用された場合でも、消費者は商標権者と関わりがある商品であると信じてしまうかもしれません。そうなると、商標の「他との区別」という機能は果たされなくなり、商標権者の信用は害されてしまいます。
そのため、商標権者は、
防護標章登録を受けることができることと定められています。
※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。
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これは企業においても同様であり、契約書作成、労務管理、不動産管理、知的財産管理といった日々の業務に関連する問題に限らず、様々な法律問題が突然起こるということは十分にありえます。
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