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こんな悩みを抱えた時に、「独占禁止法」という法律が頭に浮かんだという方も多いようです。
独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」であり、略して「独禁法」等と呼ばれることもあります。
独占禁止法はあくまで行政法規であり、私人間の契約関係等を直接に規制するものではありません。
また、独占禁止法の目的は、「公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を促進すること」(独占禁止法1条)です。
すなわち、あくまで独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進」してより良質な物・サービスをより安く市場に流通させることで「一般消費者の利益」を確保することであり、取引相手の独占禁止法違反の行為で苦しめられている事業者を救済することを直接の目的とする法律ではないのです。
しかし、他者の独占禁止法違反行為によって自己の権利・利益が侵害された場合には、民法上の不法行為に当たるとして損害賠償請求が認められることもあります。
また、独占禁止法は、独占禁止法違反行為によって「著しい損害を生じ又は生じるおそれ」がある場合に、その独占禁止法違反行為の差し止め請求を行うことも認めています。
このページでは、独占禁止法の概要を解説するとともに、独占禁止法違反行為に対して行政及び私人がどのような対処を行うことが可能かについても記載しています。
「私的独占」の定義は、独禁法2条5項に、「事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」と規定されています。「私的独占」にあたる行為を行った事業者には課徴金納付命令が下されます。
以下において、「私的独占」とは実際にはどのような行為を指すのかみていきましょう。
「事業者」とは、「商業、工業、金融その他の事業を行う者」(独禁法2条1項)です。
ここでいう商業、工業、金融は例示であり、何らかの経営的利益を供給して、その対価を受けるという経済活動を継続的に行っている者であれば、会社でなくても(個人であっても公的な法人であっても)「事業者」であると考えられています。
なお、「私的独占」にあたる行為を行った事業者には課徴金納付命令が下されます。
「私的独占」は、「排除型私的独占」と「支配型私的独占」に分類されます。
「排除型私的独占」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にさせたり、新規事業者の新規参入を困難にさせる行為をいいます。例えば、①必要経費を下回るほどの低価格での販売、②取引先に、自分の競業相手との取引をさせないようにする排他的取引、③抱き合わせ販売、④商品の供給拒絶・差別的取り扱い等が挙げられます。もっとも、事業者には営業活動の自由がありますので、これらの行為を行えば必ず独禁法違反となるわけではなく、その行為が自由な競争を妨げるようなやり方で行われたか否かが様々な角度から検討された上で、独禁法違反か否かが判断されます。
「支配型私的独占」とは、他の事業者についてその事業に対する意思決定を拘束し、自己の意思に従わせることをいいます。例えば、①株式保有等の方法による支配、②取引上の圧倒的に有利な地位を利用して意思決定の自由を奪う支配等が挙げられます。
過去に「私的独占」に該当するとされたケースは、「排除型私的独占」がほとんどであり、「排除型私的独占」への該当例は少数にとどまります。
独禁法は、事業者の「排除」行為又は「支配」行為が私的独占に該当して独禁法違反になるのは、それらの行為が「公共の利益に反して」いる場合であると定めています。
そして、「公共の利益」とは、下記の2つの意味であるとされています。
上記2.の例としては、事業者らが、商品の安全性を守るために業界の自主基準を定め、その自主基準に従うことが形式的には独禁法違反となりうる場合に、例外的に安全性という公共的な目的を考慮する場合が挙げられます。
「一定の取引分野における競争の実質的制限」という要件は、私的独占に限らず、不当な取引制限、事業者団体規制及び企業結合規制においても要件として定められています。
独禁法の目的は「公正且つ自由な競争を促進」することです。そのため、一定の取引分野=特定の市場における競争が実質的に制限されるという効果が実際に生じた場合に限り、独禁法違反であるとされるのです。
不当な取引制限の典型例は、カルテルや入札談合です。
「不当な取引制限」の定義は、独禁法2条6項に規定されていますが、これを端的に説明しますと、「不当な取引制限」とは、事業者が他の事業者と共同して様々な行為を行い、または相互にその事業活動を拘束し合うことによって、市場における競争を実質的に制限することです。
私的独占とは異なり、2以上の事業者が共同して行う場合に限られます。
ここでいう事業者が共同して行う行為とは、例えば、
等があります。共同研究開発、共同販売等の一見して独禁法違反とは思われない行為についても、その態様によっては「不当な取引制限」に該当してしまうこともあります。
もっとも、これらの行為を行ったら必ず独禁法違反になるというわけではなく、特定の市場において競争制限効果をもたらす結果が発生した場合に限り、「不当な取引制限」の規定によって独禁法違反となります。
「不当な取引制限」に該当する行為を行うと、課徴金納付命令が下されます。
事業者同士が一体となって様々な事業活動を行えば、効率的な経営を行うことができる反面、事業者間の馴れ合いにより競争が妨げられ、市場に良質で安価な物・サービスが提供されなくなるという弊害が生じやすくなります。
そこで、独占禁止法は、個々の事業者だけでなく、事業者団体(「事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体」)が、団体として下記の行為を行うことを禁止しています。
上記1.又は2.に該当する独禁法違反行為が行われた場合、事業者団体を構成する個々の事業者に対して課徴金納付命令が下されます。
独禁法は、株式保有、役員兼任、合併等の会社法上の手段によって企業間に組織的・継続的な一体性が生じること(企業結合)によって、市場における競争を実質的に制限することとなる場合、その企業結合を禁止しています。
一定の要件に該当する企業結合を行う場合は、公正取引委員会に事前届出を行い、審査を受けることが義務付けられています。企業結合が独禁法違反んとならないために、競争制限が生じないための適切な問題解消措置をとることが求められる場合もあります。
独禁法は、競争を妨げる行為を行うことを規制するのであって、競争が妨げられた状態が生じているという結果について責任を負わせるものではありません。
しかし例外的に、50%を超えるシェアを有する事業者がいる等の場合であって、新規参入が著しく困難であって価格の低下が見られない等の独占状態が著しい場合は、公正取引委員会は、事業者に対し、事業の一部譲渡等の競争回復のための措置を命じることができます。
もっとも、適用要件が厳しいため、これまで独占的状態に対する規制が適用された例は一例もありません。
「不公正な取引方法」とは、独禁法2条9項に規定された行為及び公正取引委員会の告示によって指定された行為です。公正取引委員会に指定された行為には、全ての業種に適用される「一般指定」と特定の事業分野における特定の取引方法につき指定する「特殊指定」があります。
「不公正な取引方法」にあたる行為は、①不当な取引拒絶、②対価や取引条件等についての差別取り扱い、③不当廉売、④他の事業者の事業活動の不当な拘束、⑤再販売価格の拘束、⑥不当な排他的取引、⑦優越的地位の濫用、⑧不当な顧客誘引、⑨不当な取引強制、⑩不当な競争者に対する取引妨害・内部干渉等の様々な行為です。
「不公正な取引方法」についても、これらの行為を行ったことに加えて、これらの行為によって公正な競争を阻害するおそれがある場合のみ独禁法違反となります。公正な競争を阻害するおそれの有無については、行為類型ごとに、「自由な競争が制限されるおそれ」「競争手段の不公正」「自由な競争基盤を侵害するおそれ」があるか否かといった観点から判断されます。
独禁法に規定がある「不当な取引制限」に該当する行為を行った事業者のうち、一定の要件を満たす事業者については課徴金納付命令が下されます。
公正取引委員会は、独禁法違反事件を取り締まるため、関係者と疑われるものに対し、立入検査、書類等の提出命令、出頭・報告命令等を行う権限を有しています。
これらの調査によって収集した証拠を元に審査が行われ、排除措置命令、課徴金納付命令が下されます。
また、独禁法には刑事罰の規定もあるため、公正取引委員会から刑事告発され、その結果事業者等が刑事罰を受けることもあります。
課徴金納付命令は、カルテル、入札談合等の違反防止という目的を達成するために、これらの行為によって経済的利益を得た者に対し、国庫への金銭の納付を命じる行政上の措置です。
課徴金納付命令の対象となる違反行為は、私的独占、不当な取引制限(事業者団体によるものを含む)、不公正な取引方法のうち一定の要件を満たすものです。独禁法は、課徴金納付命令につき「命じなければならない」と規定しているため、公正取引委員会には課徴金納付命令を下すか否かにつき裁量の余地がありません。よって、これらの行為を行った事業者等には必ず課徴金納付命令が下されます。
課徴金の金額は、違反行為の実行期間中の売り上げに一定の割合を乗じて算出されます。
なお、カルテル・入札談合の早期発見及び競争の早期回復を目的として、カルテル・入札談合から早期に離脱し、自主的に公正取引委員会に報告をした事業者に対して課徴金を減免する課徴金減免制度が設けられています。
私的独占、不当な取引制限、事業者団体による競争の実質的制限等、多くの独禁法違反行為につき、独禁法で刑事処罰の規定が定められています。
他者の独占禁止法違反行為によって自己の権利・利益が侵害された場合には、民法上の不法行為に当たるとして損害賠償請求が認められることもあります。
ただし、独禁法に違反すると思われる行為があれば必ず損害賠償が認められるというわけではなく、あくまで民法709条の要件を満たすことが必要です。損害賠償請求をする側に、民法709条の要件を主張立証するという負担を負うことが求められます。
独禁法は、私的独占、不当な取引制限等の独禁法違反行為について、公正取引委員会の排除措置命令又は課徴金納付命令が確定している場合は、違反者に故意・過失がなくとも損害賠償が認められる旨規定しています。
不法行為に基づく損害賠償に比べて主張立証の負担が少ない手段であるといえます。
独禁法24条は、
という要件を満たす場合に、
利益を侵害し、又は侵害するおそれのある事業者団体又は事業者に対して、その侵害の停止又は予防を請求することができる、と規定しています。
「著しい損害」を生じさせるという高度に違法性を有する行為について、現に生じている侵害の停止のみならず侵害を未然に防ぐ予防措置をも求めることができるという点に特徴があります。
独禁法21条は、「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法、又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」と規定しています。
列挙されている法律名は例示であり、ノウハウの保護や不正競争防止法上の不正競争を排除する行為等も含まれます。
しかし、「権利の行使と認められる行為」とはどのような行為を指すのでしょうか。その答えは、独禁法と知的財産権の関係にあります。
技術開発等によって知的財産権を有するようになった権利者は、自らその知的財産権を行使することができます。他人が無断でその知的財産を使用しようとした時は、知的財産権の侵害であるとして使用を行わせないようにすることも可能です。また、権利者は、ライセンス契約等によって自らが選択した相手のみに知的財産権を行使させることもできますし、ライセンスの契約に条件をつけることで相手の事業活動に制限をかけることも可能です。
これらの行為は、一見すると独禁法違反行為であるように思われることもありますし、実際に市場における競争に影響を及ぼすこともありうるでしょう。
しかし、知的財産を保護する制度は、事業者に技術開発を行わせるインセンティブを与えて競争を刺激します。また、先進的な技術が開発されることによってより良質で安価な商品が市場に出回ることは、独禁法の目的である「一般消費者の利益」にも適っています。
上記のような理由から、独禁法21条において、知的財産権についての「権利の行使と認められる行為」につき独禁法が適用されないと定められている意味については、以下のように考えられています。
「権利の行使」とは、特許法、著作権法等の知的財産法に基づいて知的財産の使用権を有する権利者が、知的財産権に基づいて無権利者の利用を排除することを指します。
そして、外形上は上記の「権利の行使」にあたるとみられる行為であっても、行為の目的、態様、競争に与える影響の大きさも勘案した上で、事業者に創意工夫を発揮させ、技術の活用を図るという、知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合は、独禁法21条の「権利の行使と認められる行為」とはいえず、独禁法の適用を受けます。
したがって、例えば、
等の行為については、「権利の行使と認められる行為」に当たらず、独禁法の適用対象となります。そして、これらの行為が、「一定の取引分野における競争の実質的制限」等の独禁法の定める各要件に当たる場合には、独禁法違反行為であると判断されることになります。
※本ページの記載事項は、記載時点における法律、状況等を前提にして記載しております。
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交通事故、債務整理、離婚、遺言・相続など、普通に生活していてもある日突然様々な法律問題に直面してしまうことがあります。
これは企業においても同様であり、契約書作成、労務管理、不動産管理、知的財産管理といった日々の業務に関連する問題に限らず、様々な法律問題が突然起こるということは十分にありえます。
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